ある冬の日記。

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お花屋さんから受け取ったばかりの花束を携え、
一呼吸置いて車から出た。
約束の時間までは十分に時間があるものの、
運転席のドアに添えた右手が小刻みに震えているのが分かった。
私は緊張しやすい性格なのだ。
親しい方と久しぶりに会う時は、特に。

この日の私は紺色のジャケット、
暗めのチェスターコートに中折れ帽という出で立ちで、
自分にとっては『これが精一杯』というお洒落だった。
今日こんな頑張ったら、次から服装どうすんだ・・・
心の中で一瞬悔やんだけれど、今は最善を尽くす時だと思い直した。

ふと隣家の庭先に目をやると、
ところどころ花をつけたつばきの木に、
二羽のうぐいすが戯れているのに気が付いた。
ステップを踏むような、ぴょんぴょん跳ねるような飛び方。
それは初春のように可愛げで、 すぅっと肩の力が抜けるような気がした。


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花束を持参すべきかどうかは最後まで決断出来なかったことの一つだ。
明るめの色合いでアレンジしてもらうべきか、
それとも控え目で謙虚な印象の花束がいいのか。
そんなことすら分からなかった。
そもそも、花を手渡すこと、引いては今回の邂逅が、
相手を苦しめる結果になってしまうのでは・・・そんな思いもあった。
それでも今、こうして両手に花束を抱え、相手を思いながら佇んでいる。

白状するけれど、私は"相手の気持ち"どころか"自分の気持ち"すら分からない。
それでもなお、"そんな気持ち"を抱え、
折り合いを付けて生きていくのだとの思いが泉のように湧き出してきたのは、
つい先頃のように思う。

・・・とにかく、と私は邪念を振り払った。
今日は精一杯、がんばるのだ。
それがあのお人にとって心の支えになることだけを願って。

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by futoshi84 | 2017-02-19 22:18 | ともだち